【退去費用を減らす】原状回復のガイドラインを簡単に解説します

「退去費用が〇〇万円もかかった…」なんて話を聞いたことはありませんか?実は、賃貸物件に関する知識がないと、高額な費用を請求される場合があります。

実際に、国民生活センターには毎年多くの相談が寄せられています。(国民生活センター「賃貸住宅の敷金・原状回復トラブル」より)

年度2018年2019年2020年
相談件数12,500件11,798件12,048件

賃貸物件の入居者は、退去時に「原状回復の義務」があり、建物をきれいな状態に戻すための費用を負担しなければいけません。

しかし、物件や入居者によって状態は異なるため、基本的には当事者による話し合いで負担する割合が決まります。

この時、何も知らないまま話し合ってしまうと、負担する必要がない部分まで請求されても気が付きません。そこで、入居者が負担する部分について理解しておく必要があります。

法律では、原状回復について細かく定められていませんが、一般的な基準となる「ガイドライン」があるので確認しておきましょう。

この記事の内容
  • ガイドラインの概要
  • 原状回復費用の負担割合の考え方
  • 敷金について
  • トラブルの解決方法

この記事では、上記についてわかりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

原状回復について知っておこう

賃貸物件から退去する際、現状回復のため修繕が必要になる場合があります。ただし、原状回復とは住み始めた状態に戻すことではありません。

原状回復については、2020年4月1日から民法が改正され、下記の通りに定められています。

(賃借人の原状回復義務)

第六百二十一条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

e-GOV法令検索「民法」より

上記を簡単にまとめると、「入居者に責任がある損傷については、修繕費用を負担する必要があるが、通常で考えられる損傷や経年劣化は対象外」ということになります。

入居者に責任があると考えられるポイント
  • 入居者の使い方次第で発生したりしなかったりする場合
  • 入居者の管理が悪く損耗が発生・拡大した場合

なお、2020年3月以前の契約については改正前の民放が適用されますが、どちらの場合であっても、国土交通省の「ガイドライン」を参考にしてください。

国土交通省のガイドラインの概要

原状回復をめぐるトラブルが多いため、一般的な基準として1998年「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」がまとめられました。(その後、2004年・2011年に改訂されています)

ガイドラインを利用する際の注意点
  • 賃料が市場家賃と同程度の民間の賃貸住宅を想定している
  • 基本的には契約書が有効と考えられる
  • 契約の内容に問題がある場合、ガイドラインを参考に話し合いをする

なお、原状回復のトラブルを未然に防ぐために、3つのポイントを覚えておきましょう。

  • 入居時に損耗の有無を確認しておくこと
  • 契約書の内容をしっかり確認しておくこと
  • 退去の立ち会い時は適当にサインしないこと

ですから、契約書はしっかり読み、使用上の注意なども確認した上で、わからない部分は質問することが重要です。

また、入居前に建物や設備を確認して、気になる部分の写真を撮ったり、チェックリストに記入するなど記録を残しておきましょう。

加えて、退去の立ち会い時は確認のためのサインを求められます。後からトラブルにならないために、わからない部分は質問しながら慎重に進めてください。

入居者が負担する部分とは?

原状回復にかかる費用のうち、入居者が負担する部分は決まっています。

  • 通常の使用での損耗 → 賃料に含まれている
  • 入居者に責任がある損耗 → 修繕費用を負担する

上記から、入居者が修繕費用の全てを負担するわけではなく、建物や設備の経過年数を考慮した上で負担割合を決めます。

また、入居者が負担するのは過失や責任がある部分のみなので、修繕が必要な最低限度の単位を基本として考えます。ただし、色が違い過ぎるなど、部分的に修繕するのが難しい場合は話し合いで割合を決めます。

なお、負担する部分についての具体的な例は下記の通りです。

原状回復の対象外となる例
  • 家具による床のへこみ
  • 電化製品による壁の黒ずみ
  • 地震による損壊
  • 無関係な第三者によるもの
入居者の過失や責任の例
  • 入居者が付けたキズ
  • 掃除をしなかったことによる汚れ
  • 使い方を守らずに設備が破損した
  • タバコの臭い・汚れ
  • ペットの臭い・汚れ・キズ

入居者が負担する部分が決まったら、次は修繕費の割合を決めます。

入居者が原状回復費用を全て負担する必要はない

原状回復の入居者負担については、建物や設備等の経過年数を考慮し、年数が多いほど負担割合を減少させるのが適当とされています。まずは負担割合の考え方について、簡単にまとめておきます。

  • 入居するまでの経過年数を考慮する
  • 減価償却資産の耐用年数を採用する
  • 耐用年数を超えても入居者の責任がある場合は対象外
  • 経過年数を考慮しない場合もある
  • 補修工事は可能な限り最低限の施工単位とする

入居者が負担する割合は、上記を考慮して話し合いで決めます。では、それぞれ簡単に解説していきます。

入居するまでの経過年数を考慮する

国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」より

入居した時点での建物や設備の経過年数を考慮して、価値の割合を決めます。例えば、入居時に新品だった場合、価値は100%と考えます。

【価値の割合】=【入居時点での経過年数】/【耐用年数】

ただし、経過年数が確認できない場合が多いため、実際は話し合いで決めることになります。

減価償却資産の耐用年数を採用する

原状回復費用の負担割合を決める場合、基本的に法人税法における減価償却資産の耐用年数を参考にします。

耐用年数とは、法律で定められた減価償却資産が利用できる年数のことです。なお、耐用年数について詳しく知りたい方は、国税庁「耐用年数表」で確認してください。

耐用年数を超えても入居者の責任がある場合は対象外

減価償却資産の場合、耐用年数を超えると残存価値は1円となります。とはいえ、入居者の原状回復義務がなくなるわけではありません。

耐用年数が過ぎた後でも、入居者の故意または過失により破損したなどの場合は、修繕費用を負担する必要があるため注意してください。

経過年数を考慮しない場合もある

部屋の中で長期間使用する部分や、消耗品と同じような部分については、経過年数を考慮しない場合があります。

経過年数を考慮しない主な例
  • フローリング
  • ふすま
  • 障子紙
  • 畳表

その理由についても簡単に説明します。

フローリング

フローリングの場合、部分的に修繕したとしても他の部分と状態が違ってしまうため、価値が戻ったとは考えにくいです。そのため、経過年数を考慮せずに修繕が必要な部分の費用のみ、入居者が負担することになります。

ただし、毀損している部分が多く、フローリング全体を張り替える場合は、経過年数を考慮することになっています。(フローリングの耐用年数=建物の耐用年数)

ふすま・障子紙・畳表

ふすまなどは価値の減少が大きいため、入居者が毀損させた場合は経過年数を考慮せず、張り替え等の費用を負担することになります。

なお、使用可能期間が1年未満の場合は、減価償却資産ではなく消耗品として扱われるため、経過年数は考慮されないと考えられます。

補修工事は最低限の施工単位とする

入居者が修繕費を負担するのは毀損させた部分が対象となるため、できるだけ少ない範囲で施工することが基本です。

ただし、部分的に修繕してしまうと、他の部分と状態が違ってしまうため、問題となるケースがあります。代表的な例がクロス(壁紙)です。

そこで、クロスの張り替えが必要な場合は、入居者が毀損させた部分を含む1面分の費用を負担することになります。

なお、ここまでの内容について詳しく知りたい方は、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で確認してください。

原状回復費用の内訳を確認する

原状回復の負担割合が決まったら、実際にかかる費用の内訳をしっかり確認してください。なぜなら、必要以上にグレードアップするための費用を負担する義務はないからです。

ですから、修繕費の内訳に書かれている施工単価を確認し、平均的な価格になっているか確認しましょう。

特約に注意すること

契約書の中に特約が定められている場合、原状回復の義務の範囲を超えた部分についても修繕費を支払う必要があります。ただし、特約として認められるためには3つのポイントがあります。

特約の要件
  • 必要性があり、客観的・合理的な理由がある
  • 入居者が原状回復の範囲を超えた修繕について認識している
  • 入居者が承諾している

常識の範囲を超えた特約については認められない可能性があるため、行政機関(最後に紹介します)などに相談してみましょう。

敷金についても知っておこう

入居時に敷金を支払うことは多いです。この敷金は、退去時に返還される場合があるため、概要を理解しておきましょう。

まず、敷金は民法で下記の通りに定められています。

第四款 敷金

第六百二十二条の二 賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。

一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。

二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。

2 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。

e-GOV法令検索「民法」より

上記を簡単にまとめると、入居者が家賃を滞納したり、建物や部屋に対して損害を与えた場合に備えて、あらかじめ預かっておくお金です。同じような理由であれば、名前が違っても敷金として扱われます。(保証金など)

つまり、退去時において家賃の滞納がなく、入居者が負担する原状回復費用が敷金の範囲内であれば、残りの金額は返還されるということです。

トラブルなった場合の対処法について

原状回復を含めた賃貸物件に関するトラブルが発生した場合は、基本的に当事者間で話し合うことになります。もし、解決できない場合は、3つの対処法があるので覚えておきましょう。

賃貸物件のトラブルを解決する方法
  • 少額訴訟
  • 民事調停
  • 仲裁

では、それぞれ簡単に解説していきます。

少額訴訟

少額訴訟とは、民事訴訟のうち60万円以下の支払いを求める場合に、原則1回の審理で済ませることができる制度です。

そのため、原状回復費用の負担割合などのトラブルに対し、少ない費用と時間で解決できます。詳しく知りたい方は、裁判所「少額訴訟」で確認してください。

民事調停

民事調停とは、調停機関が斡旋・仲介し、民事調停法の定める手続きで進める紛争解決制度です。裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、話し合いによる合意を目指します。

民事調停は訴訟に比べて、簡単な手続きで時間をかけずに解決できるメリットがあります。詳しくは、裁判所「民事調停手続」で確認してください。

仲裁

仲裁とは、裁判所ではなく第三者(仲裁人)の判断に委ねる解決方法です。仲裁人を選ぶ際は公平性を確保する必要があるため、まずは下記の行政機関へ相談するのが良いでしょう。

原状回復費用に関する相談先

退去費用を下げて好きな場所に住もう

世界的な感染症の影響で、リモートワークに適したツールが普及し、働き方は大きく変化しています。もし、毎日通勤する必要がないなら、自分の好きなエリアに住むことも可能になります。

また、家賃が生活費に占める割合は大きいため、金額を下げることができれば他の支出へ回すこともできるでしょう。

ただ、住む場所を変更する場合、退去費用が必要になります。そこで、原状回復のガイドラインを確認して、高額な請求をされても交渉できる知識を身に付けておきましょう。

その上で、自分の理想の生活に近づけるように、住みやすいエリアの物件を探してみてください。

\ 全国どこでも! /

最近では、希望の条件を入力するだけで物件を探してくれるサービスもあります。LINEのようにチャットでやり取りができるので、「自分で探すのは面倒…」と思う方は試してみてください。

\ 細かい条件も相談できる! /

なお、「引っ越しを考えているんだけど…」と具体的に相談することで、家賃が下がる場合もあるようです。もし、近隣の家賃相場より高い金額を支払っているなら、交渉材料にしてみてはいかがでしょうか?

さらに、普段の生活費を下げる方法について別の記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてください。

➡︎ その出費は本当に必要ですか?これからの人生を自分で選んでいく準備をしよう

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