最近では、宅配サービスの需要が増えたり通勤手段の変化から、バイクの免許を取得する方が増えています。しかも、フリマアプリなどで、バイクを安く手軽に売買できるようになりました。
特に、一般道で60km/hで走れて二人乗りもできる『原付二種』や、車検がなく高速道路も走れる『軽二輪』は、販売価格も手頃なバイクが多いです。
ただし、バイクの購入後にしっかり手続きを済ませておかないと、思わぬトラブルが起こってしまいます。
また、基本的に買主が名義変更の手続きを行うため、売主はリスクを抑える工夫が必要になります。そこで、バイクの名義変更に必要な書類や手順を確認しておきましょう。
この記事では、原付と軽二輪の名義変更手続きや注意点などを、売主と買主に分けて詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
バイクの名義変更の流れについて
まずは、バイクの名義について簡単に解説します。バイクは、所有者を登録することでナンバープレートが交付されます。
ナンバープレートはバイクを識別する他に、自動車税の徴収や盗難対策として使われています。そのため、所有者や住所が変わった場合は、変更手続きが必要になります。
ただし、原付と軽二輪は手続きをする場所や方法が異なります。また、それぞれ名義変更をする方法も2つに分けられます。
- 廃車登録 → 名義変更
- 名義変更のみ行う
一見、名義変更のみ行う方が簡単そうですが、売主側のリスクを考えると廃車登録をおすすめします。
もし、廃車登録をせずにバイクを売却し、買主が名義変更の手続きをしなかった場合、売主が所有していることになっているため、自動車税の請求が売主に届いてしまいます。
ですから、バイクを売却する場合は、できるだけリスクを抑えるために、廃車手続きをしておきましょう。
ただし、ローンを組んでバイクを買った場合は、所有者が販売したお店になっていることがあります。所有者と使用者が異なる場合、そのままでは手続きができないため、自分が所有者になるか、所有者の方の委任状が必要になります。
そのため、バイクの所有者と使用者の名義は事前に確認しておくことが重要です。
原付と軽二輪の違いについて
今回は原付と軽二輪の解説なので、最初にそれぞれの違いについて簡単にまとめてみました。
排気量 | 〜50cc | 51cc〜125cc | 126cc〜250cc | 251cc〜400cc | 401cc〜 |
---|---|---|---|---|---|
一般的な呼び方 | 原付 | 原付二種 | 軽二輪 | 普通二輪 | 自動二輪 (大型二輪) |
制限速度 | 30km/h | 60km/h | 60km/h(一般道) 100km/h(高速道路) |
||
二人乗り | できない | できる | |||
車検 | なし | あり | |||
免許の種類 | 原付 | 普通二輪 (小型限定) | 普通二輪 | 大型二輪 |
記事の途中では、自賠責保険料についても解説しているので、どちらに乗ろうか迷っている方は参考にしてください。
では、それぞれの名義変更に必要な手続きについて、順番に解説していきます。まずは『原付』から見ていきましょう。
原付(125cc以下)に必要な手続きについて
原付(原動機付自転車)とは、125cc以下のバイクを指すため、原付二種も含まれます。原付の手続きは、お住まいの市区町村の役所で行います。
役所によって受付時間は異なりますが、平日8時30分〜17時が多いです。詳しくは、最寄りの役所のWebサイトで確認してください。
原付の手続きは比較的簡単なので、『売主』と『買主』に分けて解説しています。
売主が廃車手続きをする場合
まずは、売主がバイクを売却する前に、廃車手続きをする方法から見ていきます。と言っても、必要なものを用意して、役所で申請するだけです。
廃車手続きをすると、「廃車証明書」が発行されます。廃車証明書はバイクを売る時に必要なので、なくさないように注意しましょう。
また、ナンバープレートを返却するため、その後はバイクに乗れなくなります。
標識交付証明書について
「標識交付証明書」とは、役所でナンバープレートと一緒に発行される書類です。所有者やバイクの情報が記載されています。
もし、標識交付証明書を紛失した場合は、役所で再交付の手続きをします。この時、申請書にバイクの車台番号や型式などを記入しますが、自賠責保険の書類を参考にしましょう。
ナンバープレートや標識交付証明書は無料で即日発行してもらえますが、再発行には手数料がかかる場合があります。詳しくは、最寄りの役所のWebサイトで確認してください。
自賠責保険について
原付を廃車登録するなら、自賠責保険も解約しておきましょう。保険会社に連絡することで解約手続きができます。
また、自賠責保険の名義変更手続きをする方法もありますが、専用の申し込み用紙に売主・買主の印鑑などが必要なため、解約した方が簡単です。
ちなみに、名義変更をしなくても自賠責保険の保険金は支払われますが、証明書の記載内容と異なる点について確認が必要になるため、請求手続きに手間と時間がかかります。
Q3.バイクを友人から譲り受けた場合、名義変更しないと保険金が支払われないのですか?
自賠責保険ポータルサイト「各種Q&A」より
A3.自賠責保険(共済)の保険金(共済金)は支払われますが、自賠責保険(共済)証明書の記載事項に変更があった場合には、速やかに契約されている保険会社(組合)において、証明書の記載事項を変更する必要があります。(後略)
売買時に売主が用意する書類について
原付を売却する時、売主が用意する書類は主に2つあります。
「譲渡証明書」は廃車手続きの際に役所で受け取ることができ、また下記の国土交通省のWebサイトから印刷することも可能です。
譲渡証明書に必要事項を記入+押印して、買主に渡します。譲渡証明書がないと、買主はナンバープレートをもらうことができません。
なお、2021年から手続きに関する印鑑の必要性が見直されましたが、役所に提出する譲渡証明書には譲渡人(売主)の押印が必要です。
詳しくは、最寄りの役所のWebサイトで「原付の名義変更」について確認してください。
買主の名義変更手続きの流れについて
買主が原付の名義変更の手続きをする場合、売主が廃車登録をしているかどうかで必要なものが変わります。
廃車登録せずに名義変更をする場合は、売主のナンバープレートや標識交付証明書が必要なので、バイクと一緒に受け取っておきます。
なお、市区町村によっては廃車をしていないと名義変更できない場合があるため、事前に確認しておきましょう。
これらを役所に提出すれば手続き完了です。ちなみに、お店から購入した場合は譲渡証明書の代わりに販売証明書をもらって、役所へ手続きに行きます。
もちろん、手続きをする際は身分証明書が必要ですし、念のため印鑑も持っていくと安心です。ナンバープレートが交付されたら、次に自賠責保険の手続きをします。
自賠責保険の加入方法
車やバイクには、自賠責保険の加入が義務付けられているので、忘れずに申し込んでください。自賠責保険は、インターネットやコンビニで加入できます。
ただし、インターネットで申し込んだ場合は、自賠責保険証明書とステッカーが送付されてくるまで1週間程度かかるので注意しましょう。
自賠責保険証明書は、車やバイクに乗せておくことが義務付けられています。また、ステッカーは忘れずにナンバープレートに貼り付けてください。
2021年4月以降の原付の自賠責保険料は下記の通りです。
保険の期間 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 |
---|---|---|---|---|---|
保険料 | 7,070円 | 8,850円 | 10,590円 | 12,300円 | 13,980円 |
1年あたりの保険料 | 4,425円 | 3,530円 | 3,075円 | 2,796円 |
自賠責保険は、どの会社で申し込んでも同じ内容になります。『損保ジャパン』のサイトが見やすかったので、参考にしてみてください。
軽二輪(125cc超〜250cc)に必要な手続きについて
軽二輪とは125cc超〜250ccのバイクを指し、お住まいの地域を管轄している運輸支局(陸運局とも呼ばれる)で手続きを行います。
運輸支局は広範囲を担当しているため、自宅から遠い方も多いはずです。平日の昼間に運輸支局へ行くのが難しい方は、インターネットで手続きを依頼することも可能です。(記事の後半で説明しています)
軽二輪は少し手続きが複雑になるため、3つに分けて解説していきます。
- 売主:廃車登録+用意する書類
- 買主:廃車登録をしてある場合の名義変更
- 買主:廃車してない場合の名義変更
まずは、売主側の手続きや準備について見ていきましょう。
売主が廃車手続きをする場合
売主がバイクを売却する前に廃車登録(一時使用中止)をする場合は、必要なものを用意して運輸支局で手続きを行います。
「申請書」と「手数料納付書」は運輸支局にあるので、その場で記入します。持参するものは、「軽自動車届出済証」・「ナンバープレート」・「身分証明書」・「印鑑」です。
ただし、注意点が4つあります。
- 軽自動車届出済証の記載内容が異なる→住民票が必要
- 軽自動車届出済証がない→理由書が必要
- ナンバープレートがない→警察への届出と理由書が必要
- 代理人の場合→委任状が必要
詳しくは、管轄の運輸支局のWebサイトで確認してください。(わかりやすい近畿運輸局がおすすめです)
廃車手続きが完了すると、「軽自動車届出済証返納証明書」が発行されます。軽自動車届出済証返納証明書は、バイクを売るときに必要なため、なくさないように注意しましょう。
また、ナンバープレートを返却するため、その後はバイクに乗れなくなります。しかし、バイクを売却した後のリスクを抑えるために、廃車手続きをしておきましょう。
税止めの手続きをする
廃車の手続きが完了したら、次に自動車税の手続きを行います。「軽自動車税申告書」に記入して提出するだけですが、窓口が異なる場合があるので、各運輸支局で確認してください。
自動車税の手続きをしないと、その後も軽自動車税を請求されてしまいます。
軽自動車届出済証について
「軽自動車届出済証」とは、運輸支局でナンバープレートと一緒に発行される書類です。所有者やバイクの情報が記載されています。
もし手元のない場合は、管轄の運輸支局に申請すれば再交付されますが、紛失したままでも廃車の手続きは可能です。
自賠責保険について
自賠責保険については、原付(125cc以下)の章で詳しく解説しているので、「自賠責保険の加入方法」で確認してください。
2021年4月以降の軽二輪の自賠責保険料は下記の通りです。
保険の期間 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 |
---|---|---|---|---|---|
保険料 | 7,570円 | 9,770円 | 11,960円 | 14,110円 | 16,220円 |
1年あたりの保険料 | 4,885円 | 3,987円 | 3,528円 | 3,244円 |
原付と軽二輪では自賠責保険の金額が違うだけで、基本的には同じ手続きとなります。
売買時に売主が用意する書類について
次に、バイクを売却する時に、売主が用意する書類について解説します。
譲渡証明書は、国土交通省のサイトから印刷できます。
売主は譲渡証明書に必要事項を記入して、買主に渡します。譲渡証明書がないと、買主はナンバープレートをもらうことができません。
なお、2021年から手続きに関する印鑑の必要性が見直され、譲渡人(売主)が個人の場合は押印がなくても申請できます。
しかし、不正防止のため、窓口の方が売主へ電話で確認することもあるので、あらかじめ売主が押印しておく方がスムーズに進むかもしれません。
買主の名義変更手続きの流れについて
続いて、買主がバイクを購入した後の手続きについて解説していきます。この時、売主が廃車登録をしているかどうかで必要なものが変わるので、しっかり確認しておきましょう。
また、どちらの場合でも、必ず身分証明書と印鑑を持っていきましょう。なお、軽二輪の手続きには自賠責保険証明書が必要になりますが、詳しくは後半で解説します。
購入した軽二輪が廃車登録してある場合は、中古車の新規届出の申請をします。上記のうち、「申請書」・「手数料納付書」・「軽自動車税申告書」は運輸支局にあるので、その場で記入します。
つまり、売主が廃車登録してあるなら、「軽自動車届出済証返納証明書」・「譲渡証明書」を受け取っておく必要があります。
軽二輪の中古車を新規で登録する手続きは、島根県自動車整備振興会のサイトがわかりやすいので、参考にしてください。
廃車登録していない場合は、名義変更の申請をします。上記のうち、「申請書」・「手数料納付書」・「軽自動車税申告書」は運輸支局にあるので、その場で記入します。
つまり、売主が廃車登録をしてないなら、「軽自動車届出済証」・「ナンバープレート」・「譲渡証明書」を受け取っておく必要があります。
軽二輪の名義変更の手続きは、近畿運輸局「軽二輪 名義変更等」がわかりやすいので、参考にしてください。
自賠責保険証明書の申し込みについて
軽二輪の申請時には、自賠責保険証明書を提出する必要があります。もちろん、ナンバープレートをもらう前の話です。
実は、自賠責保険はナンバープレートを取得する前に申し込むことができます。すると、廃車登録をした軽二輪を買主が受け取った場合でも、運輸支局で申請できるようになるというわけです。
詳細は、「セブンイレブンで申し込める自賠責保険のページ」で確認できます。
Q4.軽二輪のプレート取得前に自賠責保険に加入する場合、プレートナンバーは何を入力すればいいの?
セブンイレブン×三井住友海上「バイク自賠責保険 よくあるご質問」より
A4.空欄のままで大丈夫です。ただし、プレート取得後にバイク登録情報がわかる書類のコピーを保険会社までご提出ください。
なお、保険始期日は陸運局で取得する日に設定してください。
また、運輸支局でも自賠責保険に加入できるようなので、詳しく知りたい方は管轄の運輸支局に問い合わせてください。
軽二輪の申請が全て完了すれば、その場でナンバープレートをもらえます。
自分で手続きに行けない場合はどうする?
原付の手続きは市区町村の役所ですし、軽二輪の手続きは運輸支局なので、どちらも平日の昼間しか対応してくれません。
役所は自宅の近くにありますが、運輸支局は広い範囲を管轄しているため、すぐに行ける距離ではないはずです。
すると、多くの方はバイクを購入しても、自分で手続きができません。そんな時は、運輸支局に近い行政書士事務所に、手続きを依頼することができます。
「e代書ドットコム」なら全国の行政書士事務所を検索できるので、確認してみてください。また、運輸支局の近くにある行政書士事務所に、直接問い合わせてみるのも良いかもしれません。
原付・軽二輪は自分で名義変更の手続きができる
原付や軽二輪は、自分で名義変更の手続きができます。ただ、そのためには売主に必要な書類を用意してもらう必要があります。
まずは自分で名義変更の手順を確認してから、売主に用意してほしい書類を伝えましょう。その上で、自分も準備を整えてから、役所や運輸支局へ手続きに行ってください。
自分で名義変更の手続きを行えば、原付は無料、軽二輪は660円でナンバープレートをもらうことができます。
ただし、どちらも平日の昼間しか対応してもらえない上、運輸支局が自宅と離れた場所にある方も多いでしょう。
そんな時はインターネットの「代書サービス」か、近くの行政書士事務所へ問い合わせてみてください。また、手数料はかかるでしょうが、車やバイク関係の会社でも、名義変更の手続きを依頼できるかもしれません。
最近では、フリマアプリなどの個人売買で、安いバイクを手軽に購入できるようになりました。だからこそ、トラブルが起きないように、名義変更の手続きをしっかり確認しておきましょう。
なお、『原付二種AT』や『普通二輪AT』の免許の取り方については、別の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてください。
➡︎【普通二輪AT免許】は取得できる!難しかった点と課題クリアのコツを解説